【新規事業】理化学研究所での経験

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

「理化学研究所での経験(30年前です)」についてお話します。

院卒で企業の研究開発部門に配属され、1か月後に理化学研究所(埼玉県和光市)に約2年間出向となりました。前任の先輩が海外留学するためその後任としてでした。

配属された研究室には海外からの社会人留学生(フィンランド、イラク、中国など)が多く在籍し、また様々な大学からも学生がきて研究していました。

理化学研究所では会社からの持ち込み開発に加え、1年目に1名、2年目に2名の卒論生を任されました。2年目の2名には私が研究テーマを設定し、データも得られ無事に卒論も出来ました。さらにこの2つの研究はそれぞれ国際誌へ掲載されました。

博士課程後期の役割のようなことは果たせたと当時思いましたが、社会人になったのに学生の多い研究室に2年間というのも社会人として取り残されているようで不安でもありました。

さてここからが本論です。

理化学研究所というところは大学ではなく文科省下の研究施設です。よって、学生に授業をするということもなく、また研究者は学生ではなく基本的に博士号をもっているセミプロもしくはプロです。このような方々が中心となって研究に没頭していました。

常に何らかの研究成果がでて、頻繁に新聞などにプレスリリースしていました。

このようなプロの研究者が働いている研究所、しかも様々な分野の研究がそこでなされていました。その研究成果について毎週研究室ごとに発表会がありました。そこへの参加は自由。またそのスケジュールも事前に1か月分配布されました。

私は自身の仕事で合間をつくって、出来る限り発表会に参加し聴講しました。生物、物理、化学、量子、原子力、ゲノムなど様々な分野の先端成果に触れることができました。

その結果、私の中で研究者は自身の専門分野という狭い世界に閉じこもらず、「サイエンス全体」を扱うのが事業を担う企業研究者であり、それを自在に活用し、まるで課題解決の魔法使いになることが企業研究者の役割であると勝手に定義していました。入社2年目になった頃くらいのことです。

この定義は以降これまで全く変更することなく万進してきましたし、それが新規事業開発の幅を広げ、誰も思いつかないソリューションの機会を見出すこととなりました。

会社に戻ってからは「応用微生物、発酵工学、光触媒、有機合成、化学工学、材料科学、物理化学、生物工学、数理解析、人工知能など」と様々な研究を並行して進め、すべてのテーマを自ら企画し常に3テーマは並行して進めていました。また各領域の第一人者の先生とも戦略的に共同研究をしていました。

またそれらを事業化するために後段のエンジニアリングも現場でやりました。

科学技術は具体的なソリューションを生み出す元となるため、様々な科学技術を知っておくことでその可能性を高めることができるのです。

さらに様々な科学技術を知ること以外に事業機会を創出する科学的手法も長年の自身の実体験を振り返り、分析することで可視化することもできました。その検証のため今まで全く知識のない領域に飛び込んで新規事業開発をし、この手法の有効性(1年間で3件企画)を確認しました。

論理的に考えてもこの手法は万能と言えるものです。

理化学研究所での経験により「サイエンスは全部友人」、「それを自在に活用し問題解決の魔法使いになる」というスタンスが自身の新規事業開発の出発点となり、様々な手法の開発やノウハウの獲得となっていきました。

これらは「単なる経験値」ではなく「明らかに新規事業開発に特化した深い専門性」と断言できます。これらは学者の方にはわからず教科書になっていませんし、大学やビジネススクールでは教えられません。

新規事業開発は「アイデア」ではなく「新規事業開発に特化した専門性」が勝負を決めるのです。
また専門性ですから組織での新規事業開発に再現性が担保されます。

フレッシュなアイデア、ダイバーシティ・インクルージョン、異質な化学反応、という曖昧なイメージに期待していても新規事業開発は成功しませんし、継続性もありません。これでは本当に千三つとなってしまいます。これはかなり生産性が低いと言わざるを得ません。

尚、MBA的な知識は企業戦略論、組織論、ファイナンス論といった経営管理のためのものが中心であり、新規事業を推進する際に必要な基礎知識はマーケティング論の一部であり、新規事業を開発する専門知識はほとんどありません。

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