【新規事業】リアルオプション理論

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

新規事業開発や投資意思決定で利用する「リアルオプション」のお話をします。

まずオプションとは金融工学(デリバティブ)の中で発展してきたものです。例えば、ある金融資産を一定期間後の特定日に約束した権利を行使し、約束した価格で買えるまたは売れる権利をいいます。買う権利のオプションをコールオプション、売る権利のオプションをプットオプションと言います。

また価格の上限や下限を設定(それぞれキャップとフロアという)することもあります。

このようなオプション理論を実資産に適用したものがリアルオプションです。金融工学のオプションは不確実性の高い金融市場の変動リスク(ボラティリティ)をヘッジするために考案されたものです。

換言しますと、不確実性に由来するリスクを軽減させるための手法です。

新規事業も不確実性が高いため、このオプション理論を適用することでリスク低減ができるという効果が得られます。これをリアルオプションと言います。この考え方は25年近く前に日本でも流行り、書店に関連図書が並びました。この頃、不動産の証券化(リート商品を考案する基礎の考え方)も流行りました。

バブル崩壊後でしたが、ある意味、金融商品がリスクヘッジ、リスク分散という観点で発展した時期です。(これを駆使して急激に成長したのが米国のエンロン(元銀行員を集めた組織でエネルギー事業へ参入した会社。しかしリアルなプラントはほとんど扱わず、金融工学を駆使したエネルギ―商品で事業をしていた会社)でしたが行き過ぎのあまり粉飾決算などで倒産しました)。

リアルオプションはこのように金融工学を活用した不確実性の高い事業評価の手法です。これは現在のような市場変化の激しいビジネスの世界において、益々重要になっています。

では、リアルオプションが有効なのはどのような事業でしょうか。それは重要な局面(分岐点)で複数の選択肢がある事業です。

すなわち、最初の意思決定ですべての道筋が決まってしまうような事業ではなく、進んでいると重要な分岐点が存在し、その都度、どれを選択するか意思決定ができるような事業です。分岐点のタイミングで制度政策、経済情勢、業界動向、テクノロジーなどを確認し、分岐点の都度、参入投資判断、追加投資判断、撤退判断をすることができます。

リアルオプションの考え方を新規事業開発に活用すれば、新規事業で失敗するリスクを軽減することができます。

例えば、最初に一気に多額を投資するのではなく事業を小さく開始しマーケットの反応を確かめながら段階的に追加投資していく方法、新規事業においてターゲット顧客と商品を最初から固めてしまうのではなくやはり事業を小さく開始し顧客の反応を観ながら方針を柔軟に変更できるようにしておく方法、などです。

リアルオプションでは、デシジョンツリーを用い将来の不確実な中で分岐点ごとに複数のシナリオを整理します。分岐点が意思決定をするタイミングです。

このデシジョンツリーを作っていくことで当該事業の将来起こりうるリスクや機会を予想整理していくことができます。予想ですから必ず当たるわけではありませんが、仮の地図があるのと無いのとでは事業成功確率に大きな差が出てしまいます。

技術進歩や流行の変化が早い現在において、事業の柔軟性を確保した意思決定手法であるリアルオプション理論は非常に有効なのです。

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