【新規事業】価格戦略(プライシング)

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、新規事業で重要な価格戦略についてお話します。

価格戦略は企業の思惑、競争状態などを考慮し現場の様々な知恵で考案されており、様々なパターンがあります。いくつか例を出しながら概観します。

・ハイロープライス戦略

 百貨店や衣料品で見られる価格戦略です。バーゲンセールなどで商品を「一時的に値下げ」して販売し、集客を促したり、在庫処分したりすることを目的としています。例えばコートは11月くらいに購入すれば3月まで着られますので購入する価値が高いですがこのとき値引きはなく通常価格で購入することになります。店からすればここが儲けの時期です。一方1月に入ってコートが在庫として残っていると春まで売れ残ってしまうリスク、売れ残っていると春物を展示できないリスクなど実際のロスや販売機会ロスが発生してしまいますので、バーゲンセールで値下げをしてすべて売れるように努力します。顧客にとっては次の冬のために購入することになりますが、流行に左右されないデザインでしたら問題ないため低価格で購入できて満足することになります。

 食料品の小売店でも決まった曜日に肉や野菜などの特定の商品を値下げして集客を促します。さらに目玉商品(チラシに出す商品)では調達コストを下回る価格に設定することがあります。この目玉商品のことを「ロス・リーダー」といいます。このとき利益率の高い他の商品をついでに買ってもらうことで儲けることになりますが、購入される商品の多くはついで買いであると言われていますので十分儲けがであるのです。

・エブリデイ・ロープライス戦略

 街中でこの業態のお店が多くみられるようになりました。まいばすけっと、100円ローソン、ヨークマート、業務スーパーなど。一時的な値下げはせず、いつも低価格で販売するものです。既に商品ミックスが考えられており、集客のための低価格商品と利益をあげるための商品に分類され利益計画が作られています。

・端数価格

 割安感を出すために、1000円ではなく、998円とするものです。衣料品、外食などでよく見られるものです。

・慣習価格

 社会で認知されてしまった価格です。自動販売機の缶ジュースは100~150円、おにぎりは100円程度など日常的にその価格レベルが常識化しており、新商品を出しても高くすることが出来ません。

・名声価格戦略

 ベンツなどの高級車、ヴィトンなどの高級バック等の価格戦略です。高級、高品質というブランドを構築し、心理的高級感をさらに高めるために意図的に高価格に設定する方法です。富裕層をターゲットに心理的満足を満たさせるための価格戦略です。

 逆に値下げするとブランドを棄損してしまうのです。

・スキミング価格戦略

 上澄み吸収価格戦略ともいいます。例えば、iPhoneや新ゲーム機など新製品発売と同時にどうしても買いたいと考える購買層(イノベーター、アーリーアダプター)向けの価格設定です。この購買層はどうしても欲しいため価格にそれほど敏感ではありません(需要の価格弾力性が小さいと経済用語ではいいます)。従って、発売当初の短期間で大きな利益を上げ、開発コストなどの回収を早めることが出来ます。

 すなわち、新製品は発売当初は値下げしないで売れることを見越した価格戦略です。

・市場浸透価格戦略

 価格に敏感な顧客が多い(需要の価格弾力性が大きい)市場に参入してシェアを早く拡大したい場合などに用いられる戦略です。例えば、電力自由化により新電力が多数参入しましたが、電力はコモディティのため単純に価格競争となります。よってシェアを早く拡大するためには最初から低価格で参入する必要があります。

 最初は利益率が低いですが、大きなシェアを確保し規模の経済が出てくると利益総額は大きくできます。特に電力は一度契約されると変更されないため営業コストは売上が増えても増加せず、利益率は高まっていきます(ストック型商材)。

・プライスライニング戦略

 顧客の心理をついた価格設定です。例えば寿司屋で「松、竹、梅」という3メニューの価格設定が昔からあります。この場合、多くの顧客は「竹」を選択します。梅ではちょっと恥ずかしい、松は高いし偉そう、という心理を考慮して「最初から竹を選ばせる」ためのものです。

 この現象は寿司に限らず、他の食品以外(宿泊パックなど)でも見られます。売り手の視点ではまず「一番売りたい商品」を決め、それを選択させるために、それよりも価格が「上」と「下」をひとつずつ作るのです。

・キャプティブ価格戦略

 プリンターやシェーバーで有名になったものです。プリンターやシェーバーは低価格に設定し購入させ、それと使い続けるために必要なトナーや替え刃を高く設定することで「付属品で儲ける」というものです。

・抱き合わせ価格戦略

 マックのバリューセットが有名です。単品で購入するより「セットで購入した方がお得」になるという価格戦略で「顧客あたりの購入総額を大きくすること」を目的にしています。セットの中に利益率が高い商品を組み込むことで利益を大きくできます。

・ダイナミックプライシング

 航空チケット、宿泊料、電気料金などで見られる価格設定です。繁忙期では高く、閑散期では安く設定します。またビジネスホテルなどでは前日、当日であれば料金が安くなります(空室をなくしたいため)。

 このように稼働率向上、負荷平準化を促す目的で活用されています。

・無料サービス

 スマホのゲームアプリ、ユーチューブなどはユーザーに無料でサービス提供しています。理由は広告会社からの収入で儲けているからです。人気のゲームアプリであれば多くのユーザーを「集客」できるため広告を出す側としては広告費を効果的に活用できます。

以上いくつかの価格戦略を概観しましたが、キーワードは「どこで儲けるか」です。

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