【新規事業】オーバーシューティング

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、オーバーシューティングについてお話します。

日本の大企業の製品でよく見られたものです。特にコモディティ化したテレビ、エアコン、ビデオ録画、洗濯機、湯沸かしポットなどです。レッドオーシャンにおいて差別化を図るべく「多機能」の方向へ突き進んでいきました。結果、ユーザーからは機能を使いこなせない、マニュアルが厚い、使いにくい、というマイナス評価を逆に得ていました。気に入ったのはマニア層のみ。このような顧客ニーズを大幅に上回る製品となってしまうことを「オーバーシューティング」といいます。

大企業のどれもがオーバーシューティングの状況になり、結果同質化し、顧客は選ぶ基準が見えなくなりました。開発現場では多くの研究者が高機能実現のために様々な要素技術を開発、特許出願しながら製品へ実装するということが毎年のように繰り広げられていたのです。しかしその努力は顧客のニーズとはかけ離れていく一方であり、自社の技術自慢にしかなっていなかったのです。

例えば、安価、シンプル、高速でお湯が沸くテファールのポットは人気になりました。保温効果は無くし、速く沸くことに機能を専念したのです。これが顧客ニーズにフィットしていました。これはオーバーシューティングしているところは「逆方向の発想」により市場を獲得することができるということを示唆しています。同じ方向はレッドオーシャンのまま、逆方向には競合相手がおらずブルーオーシャンなのです。

しかし高機能方向に突き進んだ企業はヒト・モノ・カネ・時間をかけて様々な新しい技術開発をしてきた実績と自負があるため、それらを捨てることになる逆方向には社内の反発もあり行けないのです(イノベーションのジレンマ)。

もう少し広く捉えてみます。日本企業が得意としてきたのは高度経済成長期に成功した継続的改善の持続的イノベーションです。良いものを安く提供する。しかし良すぎるものは顧客は求めておらず、また価格は新興国に勝てなくなりました。

1990年頃のバブル期はまさに持続的イノベーションによりゼロイチではなく米国では既に普及していた製品を「良いモノを安く」で日本は米国を圧倒し、米国のビジネススクール等で日本企業の研究がなされたほどでした。その後、米国はシリコンバレーなどで全く新しいビジネス(ゼロイチ)を創造していくことに予算を投入していきました。結果、米国からGAFAMT、エアビー等に代表される様々なゼロイチの破壊的イノベーションとなる事業が誕生しました。いずれもグローバル展開し大成功している事業です。ゼロイチですから新興国の安価なコモディティとは競合になりません。このように米国は復活しました。

米国では現在、ギフテッドと呼ばれている人々(IQ130以上)の力を存分に発揮させることができる環境を整え支援することで今後も継続的に様々なゼロイチの事業を米国から創造させ国力を高めていこうとしています。ギフテッドには勉強だけでなく芸術的な能力も含まれます。例えばギフテッドの人は「一度読めばほとんど頭に入ってしまう」そうです。単語帳を何度も繰り返し読んで覚えるようなことは必要ないそうです。

一方、日本ではその逆となっており(同調圧力)、ギフテッドの人々(5%程度存在すると言われている)は変わり者として扱われ、不登校となったり不遇な状況となっているという実態があるそうです。親も気づかず「みんなと同じようにどうしてできないの」と叱ってしまうそうです。「天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ」(著者 北野唯我氏)という書籍も出ています。

ダイバーシティ(多様性)という言葉が盛んに使われるようになりましたが、多様性を活用することで日本から破壊的イノベーションが誕生することも期待されているのです。

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