【トレンド】ダイバーシティ&インクルージョン

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「ダイバーシティ&インクルージョン」についてお話します。

東京オリンピックを契機にダイバーシティ&インクルージョンという言葉を特に大企業で聞くことが多くなりました。名前からして意味は想像できるのですが、具体的な取り組みは多岐に渡るのだろうと思いますし、その効果は具体的にどのようなものなのか、どのようなことを期待しているのかを整理します。

「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」とは、その単語の意味のとおり、個々の多様性を認め受け入れていくことを意味します。企業はこれに何を期待しているのでしょうか。

ダイバーシティ(多様性)とは具体的には、人々は性別や年齢、国籍、文化、価値観、生活環境など様々なバックグラウンドを持っており、同じ事象が発生してもひとりひとりその捉え方、感じ方が異なるということです。すなわち、ひとりひとりがそれぞれ異なる世界を観て感じているのです。

社会は実際にはこの多様性に包まれ構成されています。そのため今までのマクロな大量生産、大量消費の考え方ではなく、このような細かな価値観に気づき取り入れていくことで、企業が文化の異なる様々な国へグローバル展開する際や顧客ニーズの多様化に対応する際に活用していこう、ひいてはイノベーションを起こしていこうというダイバーシティ経営に取り組む企業が増えています。

インクルージョン(受容)とは、ひとりひとりの多様性の存在を理解するだけでなく、互いの違いを認め合うというものです。認め合えることで心理的安全性が増し、互いに生産的なコミュニケーションがしやすくなります。その結果、人間関係が良好となり、企業組織では多様性を認めながら組織としての纏まりも生じるため、企業組織のレジリエンス、生産性、クリエイティビティが高まることが期待できます。

特に現在日本でダイバーシティ&インクルージョンが注目されている理由は、1億総活躍に代表されるように、労働人口の急激な減少および年齢構成の変化(全体的な高齢化)により労働力の確保が企業の重要課題となっていることが挙げられます。特に人手に頼らざるを得ない建設業、農業、医療福祉などは人手不足が顕在化し支障をきたしています。これを解決するために女性、シニア層、障がい者、外国人などの雇用に着目する企業が増えていったのです。

ここで問題となったのが多様な人材が働きやすい環境整備です。従来の日本型雇用システムは終身雇用制度であり、皆が同じ時間に始業し同じ時間に終業する、また均質的な組織となり様々な働き方や考え方を考慮したマネジメントをする必要がありませんでした。

現在は昔と異なり、働きながら育児と介護という負担も増え、働ける時間帯がひとりひとり異なっているという実情も増えています。

均質性に慣れている従業員や組織にとって、これらの多様性を認めて受け入れることは容易ではありません。この課題を克服していくためにダイバーシティ&インクルージョンという号令の下、ひとりひとりの従業員の意識改革、組織風土改革を進めているというのが現状です。

人事部主導で進めますが、各部署での取り組み事例なども共有しながら、ひとりひとりの多様性を受け入れ、更にそれを組織運営や事業に有効活用して会社全体の組織力を高めていく取組が進められているのです。

【ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことで期待できるメリット】

・イノベーションの創出
・多様性を尊重する風土・文化により信頼関係を構築できる
・心理的安全性が高まり、組織の生産性が向上する
・離職率低下

もう少しダイバーシティ&インクルージョンを具体的に見ていきます。

【人材の雇用と活用】

  • 女性活躍

かつて出産や育児に追われる女性にとって働きやすい労働環境が整っているとは言えませんでした。結婚すると会社から辞めさせるプレッシャーもありました。

2015年9月に公布された「女性活躍推進法」により女性が会社で正当に評価され働きやすくする動きが本格的に始まりました。人口の半分、顧客の半分は女性ですし、女性がもっと活躍することで多様化する市場ニーズへの対応力が向上しますし、女性ならではの視点を事業に生かすことができます。

  • 外国人活用

グローバル企業では、国際的な競争力強化を目指して外国人を採用するケースが多いです。海外事業の推進以外に外国人は日本人には無い視点や発想を多く持っています。これらを融合することで新たな事業やイノベーションの創出が期待できます。

  • 障がい者雇用

パラリンピックで認知度が高まりましたが、日本には1000万人近い障がい者の方がいらっしゃいます。ある特定の領域に対しては非常に高い能力を保有している人も多いです。また1000万人と言えばひとつの巨大マーケットとも言えます。例えばユニバーサルデザインの商品開発においては、障がい者の視点や意見が顧客満足を高め商品の魅力度を高め売上増加が期待できます。

  • シニア雇用

少子高齢化でシニア層の労働力に注目する企業が増えています。厚生労働省でも「高年齢者雇用安定法」を定め積極的な雇用を推進しています。シニア層の中には高いスキルを有する人材も多く、若手社員の育成や技能継承など会社組織のパフォーマンスを高める下地を作れることが期待できます。

以上のような多様な価値観、スキル、能力、知識、人脈などを保有した人材で組織化することで、意見の多様性を生み、斬新なアイデア、イノベーションへとつながっていくことが期待できるのです。

また様々な人生のステージの人材で構成されるため、例えば「高齢者向けの新規事業」を検討する場合、社内に多くのシニア人材がいればより当事者に近いニーズヒアリングや解決策が出てくる確率が高まります。

現在のマーケットはニーズが多様化し細分化されているため、多様な組織の方が細分化された領域のニーズ確認がしやすいというメリットもあるでしょう(社員数が多い企業の場合)。

以上のように多様な人材を活用することで期待できるメリットがあることはわかりました。

一方、多様な人材を雇用することで注意しなければならないこともあります。

【働き方の多様性の受容】

様々な事情(家庭事情、体力、意思など)を個々の従業員は抱えています。これに応えるためには多様な働き方を推進支援(働き方改革)しなければなりません。

具体的には、フレックスタイム制度、時短勤務、在宅勤務、確実な有給取得などといった制度を導入することです。多様な人材を雇用する上で、各人が人生の中でやらなければならないことをすべてこなせるワーク・ライフ・バランスを実現できる支援が必要なのです。

更に昨今、従業員の副業・兼業を認める動きが企業で活発になっています。

なぜ企業側は副業・兼業を認めるようになってきたのでしょうか。日本人の平均年収が30年間横ばい、税金や介護保険など負担が増えたため可処分所得は減少し、副業・兼業をしたいという人が多いこと、自身のスキルを会社以外にも活用して社会貢献・自己実現したいという人が増えたこと、などが挙げられます。

また企業側にも副業・兼業を解禁する下記のようなメリットがあるため解禁が増えているのです。

・自社以外の知識やスキルが身に付き、イノベーション創出につながる
・従業員の自律性が高まり、いきいきと働く従業員が増える(生産性が高まる)
・優秀な人材の流出を防げる

一言でいえば、各人の生き方、働き方、自己実現を尊重・支援することで各人のモチベーション、パフォーマンスを高めることができ、結果、会社内でのパフォーマンス向上にもつながっていくという考え方です。

逆に言えば、ルールなどで厳重に行動を制限すると、各人の自律性や主体性が失われモチベーション、パフォーマンスが低下してしまうということです。またこの会社では自己実現や成長が見込めないと考えた人材は離職していくことでしょう。これは甘やかすという意味ではなく、会社メリットを最初に考えた上で各人の働き方を尊重、支援するというスタンスとするということです。

【ダイバーシティ&インクルージョンの進め方】

ダイバーシティ&インクルージョンを推進する上で重要なのは、「当社は何のためにやるのか」という目的を明確にすることです。世の中で流行っているから乗り遅れないように・・・ではないのです。

現在自社は何に困っていて、将来は何に困りそうで、その解決策としてダイバーシティ&インクルージョンに期待できるからやる、というところまで明確にすることがまず第一歩です。

例えば、現在人材採用に苦戦している、将来人手不足になることがわかっている、などです。

目的を明確化した後、どのような制度をつくってダイバーシティ&インクルージョンを推進していくかを具体的に検討していくのです。

以上、ダイバーシティ&インクルージョンについて紹介しました。大企業でなくとも会社側にメリットがありますので積極的に検討、取り組んでみては如何でしょうか。

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