【トレンド】フェーズフリー
アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。
本日は、「フェーズフリー」についてお話します。
最近、テレビなどでも紹介されるようになりましたが、まだお聞きになったことない方、多いと思います。
日本は地震、台風、水害、津波など世界の中で災害の多い国です。遥か昔からこれら災害と向き合い生活を営んできました。
最近では地球温感化の影響もあると言われていますが、海水温が上昇し台風の勢力が強くなっていますし、線状降水帯による長い大雨、ゲリラ豪雨などによる大規模水害が毎年のようにどこかで発生しています。
これだけの災害が頻発しているにも関わらず、それら有事への備えは個人レベルでは十分どころかあまりされていないのが現状です。防災グッズなど販売されていますが、その売れ行きは災害後に一時的に発生するもので継続的に売れているものではありません。
その理由は様々だと思いますが、主には
・以前、災害に対して備蓄品など揃えてみたが、5年以上災害には見舞われず、購入したものを一度も使用することなく廃棄してもったいないと感じたことがある。無駄だったと感じてしまった。
・いつ使うかわからないものを買っても置いておくスペースがない
・何をどのように備えればよいのか情報を集めていないため、行動に移れない
・食品や飲料の備蓄品を定期的に交換する必要があるのが面倒
など
「普段は必要ないのにわざわざ意識し、費用をかけて準備しなければならない面倒くさいもの」という感覚があるからではないでしょうか。
そのような「人間的には自然な感覚」を無視して今までは「災害時困るから備えましょう」という危機感を煽ることで行動を促していましたが、毎日危機感をもって生活することは楽しくないですし、この何十年間の実態からそれでは上手く行かないことが事実として証明されているように思います。
このような実態を勘案して生まれたのが「フェーズフリー」という考え方です。
一般社団法人フェーズフリー協会(https://phasefree.or.jp/phasefree.html)によりますと、
日常時と非常時という2つのフェーズを区別するのではなく、フリーにするというものです。具体的には、身のまわりにあるモノやサービスを、日常時はもちろん、非常時にも役立てることができるという考え方、それが「フェーズフリー」です。
防災用品のほとんどは、普段はどこかにしまっていて、非常時のみに取り出して使うものです。
一方、フェーズフリー品は日常時のいつもの生活で便利に活用できるのはもちろん、 非常時のもしもの際にも役立つ商品・サービス・アイデアのことです。
具体例を紹介します。
・トヨタのPHV
トヨタ トヨタの給電 | トヨタ自動車WEBサイト (toyota.jp)
PHV(プラグインハイブリッドビークルの略)。日本ではプラグインハイブリッド車と呼ばれています。主に電力で走行し、燃料は電気とガソリン(もしくはディーゼル)。外部電源からの普通充電方式に対応しています。
普段は高燃費車として移動に使用しています。もし災害による停電が発生しても、PHVから家などへ電力供給(給電という)することができ、一定時間ある程度の日常を保つことが出来ます。
トヨタホームページでは、「一般家庭の約4.5日分の給電」が出来るとされています。日本において停電している時間は長くなく、4.5日も給電できればほとんどの災害において停電で困ることはないでしょう。
このように普段使用している商品が災害時でもそのまま役立つものがフェーズフリー商品です。
災害に備えて普段使用しない非常用発電機と油を購入して物置等に保管しておく必要はないのです(追加投資不要)。業務用の非常用発電機は毎年点検が必要ですし、油も定期的に交換・廃棄する必要があり、面倒ですしコストもかかります。結果、あまり普及していないのです。
フェーズフリー商品にすることが出来れば、このような経済的負担、心理的負担を取り除けますので普及し、結果、レジリエンスが向上することになります。
・アスクル(フェーズフリー・オフィス)https://askul.disclosure.site/ja/themes/113
アスクルでは、「備えない防災のススメ」としてフェーズフリー・オフィスというコンセプトとそれに関わる様々な商品を販売しています。
例えば、
「ベッドになる強化段ボール」
普段は、様々な荷物の保管・運搬のためにストックしてある段ボールが、災害時にはベッドとして使用できる、という商品です。
「目盛り付きデザイン紙コップ」
普段は、飲み物のために使用している紙コップですが、災害時には炊き出し時のお米の計量カップとして使用できる、という商品です。
「蓄光LEDランプ」
普段は、省エネ照明として使用していますが、停電時には蓄光機能を有するので弱いですが光を放ち、避難経路の目印になる、という商品です。
「バケツにもなる撥水バッグ」
普段は、濡れた傘などを入れても外部に水が染み出さず、逆に濡れては困るものを雨などから守れるバッグとして使用しますが、災害時には、バケツ代わりに約6Lの水を運搬できる、という商品です。
このように「ひとつ二役(通常時と災害時)」がキーワードです。
・在宅ワーク
コロナ禍前からオンライン会議サービスを販売する会社は日本でも幾つか存在していました。しかしほとんど普及することはありませんでした。
しかし、コロナ禍となり、オンライン会議(ZOOM、Teams等)が一気に普及しました。コロナ禍も2年以上となりオンライン会議、在宅勤務はある業種では一般化しました。
在宅勤務により生産性が向上する部分、そうでない部分があり、そのハイブリッドが良いなど、生産性という観点で議論されることが多いですが、実は「業務のレジリエンス向上」にも大きく寄与しました。
クラウドに業務で必要なデータを格納し、在宅(各自のPC)からアクセスしクラウド上で業務を進めることで会社へ出社できない状態でも業務を滞りなく進めることが出来ています。
これはまさに「普段と災害時の両方でそのまま使用できるフェーズフリー」なシステムなのです。
こちらは「ひとつ二役(通常時と災害時)」というよりは「通常時でも災害時でも同じで影響されることがない」と言えるでしょう。
災害時はまずは命を守ることが第一優先ですが、その後はすぐに「生活」があります。その生活に支障をきたさないようにするにはフェーズフリー的な発想で備えておいた方が無理なくできます。
生活の次は「仕事」があります。この仕事が滞りなく出来るようにするには普段が災害時対応になっていることが理想です。
以上フェーズフリーについてお話しましたが、「ビジネスという観点では貴社の商品、サービスをフェーズフリーという視点で見直してみて、付加価値」をつけてみては如何でしょうか。
その付加価値は他の競合商品と「差別化」できる可能性があるからです。