【トレンド】サーキュラー・エコノミー

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「サーキュラー・エコノミー」についてお話します。

経済産業省・環境省(令和2年5月18日)の資料「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の取組について」の中でサーキュラー・エコノミー(循環経済)を従来の「大量生産・大量消費・大量廃棄」のリニアな経済(線形経済)に代わる、 製品と資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小化した経済、と定義しています。

(出典:「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の取組について」経済産業省・環境省(令和2年5月18日)001_02_00.pdf (meti.go.jp)

これは、循環型社会に向けて我が国が推進してきた従来の3Rを、シェアリングやサブスクリプションといった循環性と収益性を両立する新しいビジネスモデルの広がりも踏まえ、持続可能な経済活動として捉え直したもの、としています。

(出典:「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の取組について」経済産業省・環境省(令和2年5月18日))

そもそも最初にサーキュラー・エコノミーを提唱したのは欧州委員会です。

EUROPEAN COMMISSION「COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS」Brussels, 2.12.2015

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/HTML/?uri=CELEX:52015DC0614&from=EN

そこでは循環型経済(サーキュラー・エコノミー)へ移行するためには、製品、材料、資源をできる限り長く経済社会の中で使用・維持し、廃棄物の発生を最小限に抑えることが必要である。そして持続可能で低炭素、資源効率が高く、競争力ある経済を実現するために不可欠なものであり、循環型経済への移行は従来型の経済を変革し、欧州に新たな持続可能な競争力を生み出す機会である、と言っています。

循環型経済(サーキュラー・エコノミー)は、資源不足や価格変動から企業を守り、新たなビジネスチャンスと革新的でより効率的な生産・消費方法の創造を支援するものであり、EUの競争力を高めることにつながると同時にあらゆる技能レベルの地域雇用を創出する。更にエネルギーを節約することができ、気候変動、生物多様性の破壊、大気汚染、土壌汚染、水質汚染など、地球の再生能力を超える速度で資源を使い果たすことによるこれらの取り返しのつかない損害を回避することにもつながる。したがって循環型経済への取り組みは、雇用と成長、気候・エネルギー、社会課題、産業革新など、EUの主要な優先課題、および持続可能な開発に関する世界の取り組みと密接に結びついている、と記載されています。

更に製品の循環については、「より良いデザインが製品の耐久性を高め、修理やアップグレード、再製造を容易にする」、とし製品設計の重要性を指摘しています。またリサイクル業者が製品を分解し、貴重な材料や部品を回収するのに役立つ設計とすることにも言及しています。このような循環を前提とした製品設計によって、全体として貴重な資源を節約することができるのです。しかし、現在は生産者、ユーザー、リサイクル業者の利害が一致していないため、これを実現するには不十分。したがって当該市場での健全な競争を維持した上で、製品設計を改善するインセンティブを提供することが不可欠である、と提言しています。

欧州委員会は、エネルギー関連製品の効率と環境性能を向上させることを目的としたエコデザイン指令を策定しています。エコデザイン要件は主にエネルギー効率を対象としてきましたが、今後はあらゆる製品に対して修理可能性、耐久性、アップグレード可能性、リサイクル可能性、あるいは特定の材料や物質の特定といった観点について検討するとしています。

以上の製品にのみならず、「生産プロセス」「消費」「廃棄物管理」「資源再利用」について詳細に記載され、特に「プラスチック」「食品ロス」「重要な原材料」「建設・解体」「バイオマス・生物由来製品」を重点分野としています。

以上が欧州の動向ですが、欧州に自動車や電子製品など輸出している日本企業にとって影響を与えてきます。そこで日本政府も日本版サーキュラー・エコノミーの実現に向けて推進しているという状況です。

日本における課題認識としては、①資源に乏しい国ですので「主力製品である電子製品や自動車で使用する貴金属等の原料」の入手が今後難しくなってくると予想。②アジア諸国の廃棄物輸入規制をきっかけに、従来輸出してきた古紙や廃プラスチック、廃電線が国内に滞留し、国内処理システムが逼迫している。③廃棄物を原料として受け入れていたセメント産業等の国内生産規模が縮小しており、現行の循環システムを中長期的に維持することは困難である、を挙げています。

(出典:「サーキュラー・エコノミー及びプラスチック資源循環分野の取組について」経済産業省・環境省(令和2年5月18日)

日本は3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取り組みを長年推進してきました。しかしプラスチックや金属ゴミ、紙ごみが中心で貴金属等の全体ではありません。しかも紙ごみはリサイクルしきれずアジア諸国へ輸出していました。

根本的には「経済性が乏しい」のがその理由です。欧州委員会でもインセンティブをどう与えるかを指摘しています。再生可能エネルギー同様、従来の低コスト化が進んだ経済活動の中では経済性は厳しく自然に自律的にサーキュラー・エコノミーが進展していくことは難しいでしょう。

再生可能エネルギーの普及のときと同様、自治体や公共施設においてまず使用され、それが規制というインセンティブあるいはESG投資という金融インセンティブなどにより徐々に民間領域に広がっていくというステップとなるでしょう。

サーキュラー・エコノミーを進展させることは持続可能な地球社会づくりにとって不可欠であることは疑う余地はないと思いますが、資本主義社会の中で普及させていくことは容易ではなく長期的な取り組みとして進めていく必要があります。

サーキュラー・エコノミーの民間領域でのインセンティブは現状ESG投資に依存しているところがあり、民間企業にとってはビジネスチャンスとまでは言えない状況と思いますが、世界規模で動いている方向性ですので、アンテナをはっておくとよいと思います。

最後にサーキュラー・エコノミーに取り組んでいる事例を下記します。ご参考になれば幸いです。

・メルカリ

メルカリ – 日本最大の売れるフリマサービス (mercari.com)

有名ですね。製品の二次流通システムです(リユース)。

・ユニクロ

RE.UNIQLO:あなたのユニクロ、次に生かそう。 | 服のチカラを、社会のチカラに。 UNIQLO Sustainability

ユニクロは全商品をリサイクル、リユースする取り組み「RE.UNIQLO」を進めています。たとえば難民への衣料支援や、CO2削減に役立つ代替燃料への再生など。さらに「服が、服に生まれ変わる時代」への挑戦をはじめています。その第一歩が、ダウンリサイクル。世界中でクローゼットに眠るユニクロのダウン商品を回収、最新のアイテムへ。資源を有効に使い、環境への負荷を減らします。

・ユニリーバ

ユニリーバ、廃棄物ゼロの世界を目指して新たなコミットメントを発表 | Unilever

ユニリーバは、2025年までに以下の目標の実現を目指しています。

非再生プラスチックの使用量を半減する。そのためにプラスチックパッケージの使用量を絶対量で10万トン以上削減するとともに、再生プラスチックへの切り替えを加速する。販売する量よりも多くのプラスチックパッケージの回収・再生を支援する。

また同社は既に発表している「2025年までにプラスチックパッケージを100%再利用可能・リサイクル可能・堆肥化可能なものにする」「2025年までにパッケージの少なくとも25%を再生プラスチックにする」という目標についても進めています。

・ブリヂストン

資源を大切に使う|Environment(環境)|サステナビリティ | 株式会社ブリヂストン (bridgestone.co.jp)

環境長期目標(2050年以降):100%サステナブルマテリアル化、を掲げています。具体的には、

バリューチェーン全体を通して、使用する資源を減らす(リデュース)、資源を循環させる(リユース、リサイクル)、再生可能資源を拡充・多様化する、という3つのアクション。

1.原材料使用量を削減
・軽量化技術
・耐久性向上・長寿命化技術
・製造時のロスの低減

2.資源を循環させる&効率よく活用する
・リトレッド技術・ソリューション
・再生ゴム、再生カーボンブラック

3.再生可能資源の拡充・多様化
・天然ゴムの生産性向上技術
・天然ゴム供給源の多様化(グアユール)
・バイオ由来の原材料の開発

・ミツカングループ

新主食 ZENB(ゼンブ)公式通販

ZENBは人や環境への負荷が少なく、「おいしさ」と「カラダにいい」をともに叶える新しい食生活を実現を目指していきたいという想いで立ち上げた新ブランド。

株式会社 ZENB JAPAN(ミツカングループ)がミツカングループZENBの通信販売を行っています。

・イワタ(寝具メーカー)

unbleached│株式会社イワタ【IWATA】 (iozon.co.jp)

無漂白、無染色の天然素材のみを使った「アンブリチード(unbleached)」を発売しています。メンテナンスや仕立て直しのサービスもしており、環境配慮および製品ライフサイクルの長期化に取り組んでいます。自社工場や本店の電力は100%再生可能エネルギーを使用しています。

・アトリエデフ(住宅メーカー)

持続可能な未来に向けて | アトリエDEF (a-def.com)

人にも地球環境にも優しい家づくり、自然の力を借りる暮らし。限りある資源を大切にしながら永く使い続ける。みんなが笑顔で暮らせる未来のためにアトリエデフはSDGsとサーキュラー・エコノミーに積極的に取り組んでいます。

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