【新規事業】情報の非対称性

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「情報の非対称性」についてお話します。

情報の非対称性というものはあらゆる場合に、ほぼ100%存在しています。経済学的な側面では、「売り手」と「買い手」で保有する情報には大きな格差があります。これを情報の非対称性といいます。

例えば、中古車を買いに行ったとき、その価格が適正であるか否かは買い手にはほとんどわかりません。年式、走行距離、事故歴程度の情報で判定するしかありません。一方、売り手の方は整備記録など細かな情報を保有しています。このように売り手と買い手の間に大きな情報格差があります(情報の非対称性)。しかし、買い手は売り手を信用できるかどうかくらいしか見極める術がないのです。

中古物件や土地についても同様です。近隣環境がどのようなものかは売り手はよく知っていますが、買い手はほとんど知りえないのです。

また水道、電気、ガス、電車などの公共財の価格も買い手には適正なのかどうかわかりません。ここにも情報の非対称性が存在しています。

通常、売り手の方が情報優位であり、得をするようになっています。これは資本主義の自由競争をゆがませるものですが、一方でこれが「利益の源泉」の一要因となっているのです。ですから事業者からすれば利益を確保するための重要な要素です。

完全自由競争は理論上にしか存在しませんが、そのような環境では事業者の利益はゼロとなります。資本主義での利益の源泉はいかに「自由競争にゆがみを生じさせるか」です。例えば、特許により事業を独占することで自由競争させないようにして利益を確保するという方法があります。

また差別化商品によって単純な競争を回避し、利益を確保するという方法もあります。

いずれも自由競争にゆがみを生じさせるものです。情報の非対称性もそのゆがみを生じさせるひとつの手法なのです。ですから事業者視点では情報の非対称性はプラスなのです。

一方、買い手の方が情報優位となるケースも稀にあります。例えば、自動車保険商品の購入です。自動車保険商品を購入したいと考える人は事故を起こす可能性が高い人であるとも言えます。保険会社としては出来る限り保険は払いたくないですが、事故を頻繁に起こす人ばかりが保険に加入してしまうとそうではなくなり赤字となります。このような状況を逆選択といいます。

以上のように事業者(売り手)にとっては、情報の非対称性は利益の源泉となりうるもので、決して否定されるものではなく、むしろ戦略的に活用していくことになります。

しかし、インターネットで多くの情報が簡単に入手できるようになった現在では情報の非対称性も少し緩和されている部分もあります。一方で事業者側がビックデータを入手できるようにもなっており、一層、情報の非対称性が大きくなっている領域もあります。

事業者は情報の非対称性は利益の源泉のひとつであるということを意識しておく必要があります。

以上は商取引における情報の非対称性の話をしました。しかし日常生活においても情報の非対称性は常に存在しています。

例えば、上司が部下に対して「今後はこのような方針で進める必要がある」と力説しても部下には伝わりません。上司の方が会社情報を多く入手しており、それを踏まえた発言をしています。一方、部下が入手している会社情報は上司より少ないため、なぜそのようなことを言うのかその背景情報がないためピンとこないのです。

上司部下の関係でなくとも、他部門間での折衝においても情報の非対称性は間違いなく存在し、意思疎通が困難となります。

友人や家族との会話においても一人一人の経験や保有している情報は異なるため、意思疎通は容易ではありません。

例えば、あなたがフランス旅行にいった話をフランスに行ったことがない友人に話しても、友人はその情景を思い浮かぶこともできず、あるいは思い浮かべたとしてもあなたの経験した情景とは全くことなるものを想像していることは間違いないです。

このように情報の非対称性は常に存在し、意思疎通を困難にしています。ですから「情報の非対称性は常に存在し、回避することはできない」ということを前提として意識した上で、意思疎通を図れるように話し手も聞き手も工夫した会話をする必要があるのです。

情報の非対称性は常に存在するもので、ビジネスでは有効活用、買い手はその餌食に出来る限りならないように情報収集、日常会話での意思疎通では注意を払う、ということが必要なのです。

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