【トレンド】SDGs

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「SDGs」についてお話します。

内容は経済産業省が2019年5月に発刊した「SDGs経営ガイド」(https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190531003/20190531003-1.pdf)を情報ソースとし、これを新規事業創出のプロの視点での考察を入れながら解説していきます。

【SDGsとは】

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、 2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。

17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいます。

【SDGsと企業の関係】

金融機関や投資家、株主などはこのSDGsに関連した事業あるいは当該事業を積極的に進める企業へ優先的に投資する方向性(※ESG投資)となりつつあり、新規事業および企業において資金調達を考える上で重要な視点となってきています。

※ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。

(出典:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html

逆にSDGs実現のためには、企業の参加が必要不可欠です。地域経済における雇用を生み出し、イノベーションを率いる役割を担うのは事業を行う企業です。このような企業に対して、ESGやSDGsという世界的なフレームワークを用いて資金の流入がより促進される好循環が生まれることが期待されています。

SDGsは、2030年までの世界の「あるべき姿」を示しおり、この将来の「あるべき姿」から逆算して「今何をすべきか」を考える「バックキャスティング思考」が必要となります。

SDGsが示す将来の世界のあり方とは何か、そこからバックキャストして描ける道筋はどうか、そのために必要となる投資やイノベーションは何か。を考えることが求められています。

新規事業で言えば、「あるべき姿(ビジョン)」を実現するために今から何をしていくべきかをバックキャストして描くのと同じです。

単に既存事業にSDGsのラベルを貼ることによる現状肯定ではなく、100年先を見据えてこれまで誰も取り組んでこなかった社会課題に経営者がどのように取り組むかがSDGs経営の本質です。

具体的にはどのような新規事業を創出していくか、どのように現在の事業を革新するか、など自社ならではの長期ロードマップをミッション(自社の存在意義、パーパス)と照らし合わせて考えていくのです。

【SDGsから観た企業経営におけるリスクと機会】

SDGsに取り組まなかった場合の「リスク」として、企業の評判が下がる、規制が強化された際に規制に抵触する、消費者が商品を購入してくれなくなる、といったものが想定されます。

以前はESGやサステナビリティに関する取組を先んじて行うことにより、中期的な企業価値が上がり競争力向上につながると考えられていたが、最近はどの企業も取り組んでいるため取り組まないこと自体がリスクであると見方が変わってきています。

SDGsは挑むべき目標であり、それを実現させる事業は成長の機会として捉えることができます。例えば、地球温暖化を抑制するために再生可能発電事業への投資を拡大し、事業拡大成長させていくということがあります。

しかし現状はまだSDGsに関する事業で利益を上げることは容易でない状況です。従来の延長線上で捉えるのではなく、技術革新や非連続な発想などを駆使して事業成立させていく必要があります。

【日本企業の理念とSDGs】

「世のため人のため」という考え方は、日本では当たり前の考え方です。パーパス経営と言われなくともそれが当たり前、それが会社の存在意義です。SDGsは「世のため人のため」を具体的に世界が抱えている、あるいは今後起こりうる重要課題とあるべき姿を整理し明示したものだと言えます。

【ベンチャー企業とSDGs】

大企業の場合は会社をSDGsにどのようにフィットさせるか、どのようにフォローするかがテーマの中心ですが、ベンチャー企業の場合は会社の設立、ミッションそのものがSDGsと整合している事例もあります。

新規事業もベンチャー企業同様、会社のミッションとある程度整合する必要はありますが、これからの会社を作っていくという意味ではSDGsを整合させやすいと言えます。

【投資家を取り巻く環境変化】

お客様の意識向上に後押しされ、最近では機関投資家もSDGsやESGに関する感度を上げています。特に欧州の機関投資家の要請で、ファンダメンタルの運用の中にESGをインテグレートしています。気候や人権等については、投資家も対応する動きがあり、今後も進むと予想されています。欧米でのIRでは最初にESGやSDGsについて質問されることが多く、特に欧州系の投資家は関心が高いです。

換言すると、先進国の膨大な資金を調達してグローバルに事業展開したい場合、その資金調達を円滑にするためにはSDGsやESGの視点で投資家へ説明できなればならなくなるということです。

【長期的な企業価値の評価とSDGs】

SDGsの考え方は、「その企業がこれからも世の中から必要とされるか」を確認する視点とも言えます。投資家は当該企業の将来の企業価値に興味を持っています。将来企業価値が高まると期待できる企業に対してはまとまった資金を長期投資してきます。

SDGsの考え方は、世界が目指す方向性ですから長期的に成長していく可能性があるため、投資家も気にしているのです。

【SDGs経営を行う企業のパフォーマンス】

欧州ではESGの上位20%がコンスタントにパフォーマンスが良い。ESGスコアが高い銘柄は高バリュエーションの傾向があり、低ボラティリティやクオリティのファクタ要素が高い。ESGやSDGsはパフォーマンスの観点でポジティブ。となっているそうです。

ESG投資が果たす役割が大きくなる中で、資本コストの観点からESGターゲットを満たす企業は低金利で資金調達が可能となります。一方でESG投資を行っている企業の市場価値が必ずしも上昇しない背景として、その投資に対するリターン・効果を市場参加者が十分に理解できていないことが指摘されています。企業が安心して、自信を持ってESG経営をしていただくためにはESG経営がプライシングされていくという好循環が必要という見解があります。

【ミレニアル世代】

若い人の考え方は「SDGsネイティブ」であり、社会課題を解決したいということがモチベーションのドライバーになっています。そのため企業にとってSDGsは人材採用上、大切になっています。

ミレニアル世代はどのような社会貢献をしているかをビジュアルに感じられない企業ではあまり働きたくないと考えているようです。

【連携はSDGs経営の重要なカギ】

一企業だけではなく、行政あるいは他業界との連携を通して新しい価値を生み出すことは社会課題解決には重要です。経済産業省のJ-Startup各社のように、大企業1社では実現できなかった世界をベンチャーの力や知恵を借りることで実現できる、という社会になってきています。社会課題解決とビジネスを両立させることがまさに「SDGs経営」の体現です。

【企業での具体的取り組み方法】

SDGsは各企業に17の目標、169のターゲット全てに焦点を当てることを求めているわけではありません。自社にとっての重要課題を特定し関連の深い目標を定めることで、自社の資源(強み)を投入することができ、結果として自社ならではのSDGsへの貢献が可能となります。

自社の強みを投入できるからこそ、事業としても成立する可能性が高まるのです。これがSGDs経営の方向性です。

【SDGs経営を仕組みで持続させる】

社会課題の解決を存在意義として掲げる日本企業は多い。経営者が変わろうともそのミッションを受け継ぐ「仕組み」があれば、安定的な経営の礎となり、投資の呼込みにもつながります。大事なのは、会社を興したときの目的を100年後まで存続させる、長期軸でアイデンティティーをしっかり引き継いでいく、ということです。

【価値創造ストーリーを描き発信する】

企業は、理念やビジョンを実践することにより、どのような経営を目指すのか、そしてイノベーションを通じて、どのような社会的課題を解決して持続的に企業価値を高めていくのかなどを、できるだけ分かりやすいストーリーに仕立てた上で自発的に社内外に情報開示をしていくことが重要です。

投資家に対しては、ESG投資を積極的に行っていくために企業側から投資家側に対して「SDGsに積極的に取り組んでいて、それが競争力の源泉になっている、TOPIXや他と比較したときにアウトパフォーマンスする」という仮説やストラテジー、できればエビデンスを示すことが必要となってきます。

以上、経済産業省が2019年5月に発刊した「SDGs経営ガイド」を情報ソースを基に整理しました。

【まとめ】

・SDGs経営の本質は、SDGsの中で自社にとって重要なテーマを選定し、それを自社ならではの方法で事業として実現していくこと

・その実現のためには、資金(投資家)、優秀な人材、連携が必要であり、企業は「自社のビジョン実現につながるSDGsに積極的に取り組んでいて、それが自社事業の競争力の源泉になっている」ことを情報発信していく必要がある

大きな社会課題に挑んでいくというのはワクワクしますね。そのようなご相談も弊社は承っています。(サービス内容 | IB Designers (ib-designers.com)

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