【トレンド】人工知能(AI)

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「人工知能(AI)」についてお話します。

人工知能と言ってもその中身の技術は数理計画モデル、機械学習、自然言語処理など様々な技術があります。それぞれの技術は独自に進化しており、その技術に適した課題に応用することで価値を生みます。

またこれらの技術は数十年前から研究されており、要素技術自体も進化していますが、コンピュータの処理性能が飛躍的に向上した結果、現在、人工知能が実用になったという状況です。

例えば、以前私が開発した数理計画モデルを使用した最適化シミュレーションでは20年前であればスーパーコンピュータで1年以上かかっていた計算を現在では家庭用PCで数十分で計算できます。すなわち20年前でも計算自体は出来たのですが結果が出るまでの時間がかかり過ぎて実用化できなかったのです。

現在、膨大なデータをクラウドに蓄積して処理することでその結果を場所に関係なく世界どこでもインターネットを介して利用することが出来ています。

今後益々このようなサービスが提供されていくでしょう。

人工知能を汎用性の切り口で「汎用型AI」と「特化型AI」に分ける場合があります。現在実用化されている人工知能は特化型AIです。汎用型AIはAGI(Artificial General Intelligence:汎用的人工知能)とも呼ばれ、現在まだ存在しません。

【汎用型AI】

AIというとスターウォーズなどに登場するロボットに近いイメージで知的なロボット(ロボットの頭脳がAI)が人間の知性を模倣・学習し、更に自律的に考え複雑なタスクを高度に処理してくれるとイメージするのではないでしょうか。

これは大きな誤解であり「AIは人間の代わりに何でもしてくれる賢い存在」ではないのです。現在のAIに人間の認識能力や常識、感情なども含めたものを理解させることは出来ませんし「何でもできる」存在でもありません。

一方でこのような汎用型AIの実現は研究者にとって大きな目標であり、様々なアイデアが提唱されていますが、まだブレークスルーとなるような手法は見つかっていません。汎用型AIはまだ進化の途上にあります。

そこでここでは特化型AIについて少し詳しく説明します。

【特化型AI】

特化型AIは対象とする課題に特化しているという意味で有用ですが活用範囲が限られます。例えば、画像認識AIは様々な画像を学習することで画像を覚えていく人工知能です。この技術を用いて、工場での製品検品管理、レントゲン画像での異常発見など様々な用途に使われています。

応用する課題ごとに覚え込ませる画像が異なるため、他の課題には使えない点で特化型AIとなります。画像認識技術自体は汎用的と言えますが、これを使用して「価値を生み出す」となると特化型AIにならざるを得ません。

以下各AI技術とその応用についてお話します。

◎数理計画法

一定ルールと制約条件の範囲内において最適となる状態を計算する方法です。目的関数を定義しそれを構成する複雑で多くのパラメータを設定した数理計画モデルを作成します。そしてこの目的関数が最適(例えばコスト最小、時間最小、エネルギー最小など)となる状態を計算し結果を得るものです。

例えば、最適な配送計画を自動計算で立案する(配送時間が最小となる等)、エネルギー消費量を最小にするエネルギープラント運転計画を自動立案する(プラント運転計画)、介護施設等のシフトが多い職場において職員ができるだけ納得するシフト計画を自動立案する(シフト計画)など多くの活用事例があります。

数理計画法は論理的に結果を導く演繹的計算方法です。従って、曖昧さの小さい機械のオペレーションなどにおいては機械学習(実データを学習していく帰納法)より精度が高く複雑な問題を解くことに適しています。

◎機械学習

機械学習 は「データ」の数学的モデルを使用してコンピュータが自動で学習できるようにするプロセスです。具体的にはアルゴリズムを使用してデータ内の「パターンを識別」し、そのパターンを活用して予測などの価値を提供するものです。データ量と経験値が増えると機械学習の結果がより正確になっていくという特徴があります。

機械学習による精度を高めるには良いデータ(ノイズデータは除外する:データクレンジング)で学習させることが必要となります。

機械学習で用いられる手法としては、ニューラルネットワークとディープラーニングがあります。アルファ碁で有名になった技術はディープラーニングです。但し、ディープラーニングはニューラルネットワークの発展形であり、ニューラルネットワークを多層化することで学習能力やデータ分析能力の向上を図ったものです。

現在の機械学習ではディープラーニングが主流となっています。実用時間の範囲内で多層化の計算ができるようになったのはコンピュータの処理能力が高まったことによります。

機械学習には大きく3つの学習方法があります。「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」です。

<教師あり学習>

「正解のデータ」を覚えさせていく方法です。

この「正解を覚えさせたAI」は主に「識別」と「回帰」を可能とします。

・識別

識別とは、覚えさせた正解データをもとに、入力してきたデータを「正しいもの」と「正しくないもの」を分類したり認識したりするものです。

例えば、正解の画像を覚えさせたAIを用いて、工場での製品検品管理、レントゲン画像での異常発見など様々な用途に使われています。

また幼稚園などでの運動会や遠足の写真において「自分の子供の写真」を正解データとして覚えさせると、自分の子供が映っている写真だけを自動抽出することも出来ます。

・回帰(予測)

回帰は、一般にはもとの位置または状態に戻ることあるいはそれを繰り返すことです。一定の時間間隔で連続するデータを学習させることで将来予測が出来ます。

回帰分析(単回帰、重回帰)が古くから用いられている手法ですが、近年、膨大なデータを短時間処理することが出来るようになったため、予測精度向上や用途拡大が期待されています。

例えば、電力需要予測をすることで発電所の運転計画を立案する、電力市場価格を予測する、店の来客数を予測することで最適な仕入量を実現し廃棄ロスを削減する、などその用途は広いです。

<教師なし学習>

教師なし学習は「正解のデータ」を与えずに学習させる方法です。

ビッグデータを学習させることでデータの特徴やパターンなどを認識し、それが正解か否かを「判断」できるのが教師なし学習の特徴です。帰納法により判定するものです。

代表的なものにクラスタリングがあります。大量のデータを特徴やパターンから自動分類してグループ化する機能です。

例えば、性別や動物の種類を判別してグループ化したり、年齢別にグループ分けすることが出来ます。

<強化学習>

強化学習では、出力される結果にスコア(点数)をつけて、最も望ましい結果を出すための行動を学習させていきます。強化学習を行う機械は、スコアという報酬をいかに最大化するかを判断しながら学習していくのです。

例えば、ブランコをこぐ機械を作るときに強化学習を取り入れることで何度もこいでいくうちにどんどん上手にこげるようになっていきます。

教師なし学習との違いは、機械が報酬を得るために最適な行動を考え実行するという点です。

以上のように特化型AIの活用先は様々あります。

企業がAIを活用するという点で重要なことは、「AIによって何を実現したいのか」を議論することです。

AIという掛け声だけでなく、具体的に何をしたいのか、どのような課題解決をしたいのか、などを議論することが最初です。そしてAIは投資対効果で判断されるべきものです。

当初、AIが人間の仕事を奪うかもしれないという話がありましたが、AIは人間をサポートする存在です。人手不足が今後深刻化していく確定した未来においても健全な経営をしていくためには、人間と人工知能との役割分担や共同作業が必要であり、ひいては人工知能を活用することを前提とした人材育成と再配置などを進め生産性の大幅向上を進めていくことが急務となっているのです。

特化型AIは特定領域では人間を凌駕する能力を発揮しています。例えば、医療の世界では平均的な医師を超える画像診断を行えるAIが登場しています。AIを活用することでより多くの命を救うことにつながりますし、医師の過重労働の軽減にも寄与するでしょう。

是非、貴社でも人工知能活用の検討をしてみて下さい。簡単な課題から始めることをお薦めします。

AI導入についてご相談ください。

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