【トレンド】メドテック

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「メドテック」についてお話します。

「メドテック(Med Tech)」とはMedical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語です。

IT、ICT、IoT、ロボットなどのテクノロジーを医療分野に導入し、今までにない革新的な医療を提供する取り組みを指します。具体的には、医療機器・診断機器のICT・IoT化、医療・介護用ロボット、リモート技術による遠隔手術支援・遠隔診療、AIを活用した画像診断支援など多岐に渡ります。

<日本政府がメドテックに注目する理由>

少子高齢化が長年継続し、超高齢化社会となっている日本において、税収が増えない中で社会保障費が毎年着実に増加しています。結果、財政状態が不健全な状態となっており、次世代に負債を残さないために社会保障費の伸びを抑制したいというニーズが政府にあります。

医療分野に最新のテクノロジーを導入することで、病気の早期発見・治療費を抑制でき、更に社会復帰も早められることから労働人口減少への悪影響も小さくできます。これにより社会保障費の増加を抑止でき、税収の減少も防ぐことが期待できます。

<医療現場からの期待>

医療従事者、特に看護師、介護士の人手不足は深刻であり、今後もその度合いは増していきます。その一方で看護や介護が必要な高齢者数は引き続き増えていきます。また看護師不足は医師の負担も増加させます。医療従事者の負担は益々増加し、近い将来、患者が十分な医療・看護・介護を受けられなくなる恐れがあります。

このような課題を解決してくれるものとしてメドテックに期待している部分があります。

<メドテックの成長性>

日本は世界で最も少子高齢化が進んだ国ですが、経済的に豊かになった台湾、韓国、中国においても急速に少子高齢化が進んでいます。欧米でも少子高齢化が進んでいます。

世界的に見ても現在日本が抱えている課題が顕在化することは間違いなく、メドテック市場は50年間は成長し続けることでしょう。

<ディープラーニング>

それでは人工知能の活用事例であるディープラーニングによる画像診断についてみてみましょう。

(出典:厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書」平成 29 年6月 27 日)

診断系医療機器は、ディープラーニングとの親和性が高く新たな付加価値が期待されます。例えば、専門医が十分存在しない僻地や発展途上国においてディープラーニングを応用した診断用医療機器を活用すれば診断医療水準を向上させることができます。

またディープラーニングを画像診断支援(ダブルチェック)に活用することにより、医師の読影に要する労力を軽減、重点的に確認する必要のある画像のチェックに注力でき、読影精度の向上、見落とし率の低下につながります。

ディープラーニングを用いた画像診断支援アルゴリズムの開発においては、正確な診断名が付与された教師付の医療画像データを大量に収集することが必要不可欠となります。

応用先例1:放射線画像

画像診断で用いられる放射線画像には、エックス線(X線)、コンピューター断層(CT)、核磁気共鳴画像法(MRI)、核医学(PET・SPECT)等があります。

日本国内に設置されているCT・MRIの数が多い一方で、放射線科専門医は少ない。このため放射線科専門医1人あたりの読影数が多いのが現状である。特に、健診で広く行われている胸部X線検査では、読影しなければならない画像は相当数に上ります。

また科学技術の進歩に伴ってCT・MRIの撮影スライス厚が薄くなり、微細な病変でも発見できるようになる一方で、1回の検査で大量の画像が発生し、放射線科専門医に大きな負担が生じています。

このため放射線科専門医の負担を軽減しつつ、効率的、かつ正確に診断を行うためにディープラーニング活用の効果は大きいと考えられます。

応用先例2:内視鏡画像

日本企業は内視鏡の開発能力が高く、国内・米国・欧州のいずれの地域でも日本企業が市場シェアの大半を占めています。内視鏡についてもディープラーニングと組み合わせることによって、日本企業が強み(内視鏡の開発能力)をさらに発揮できると予想されます。

ディープラーニングがビルトインされた内視鏡が実用化されれば、内視鏡の操作中に病変部位を示すことが可能になり、医師の負担軽減や見落とし率の低下につながることが期待されます。

オリンパス株式会社が大腸の超拡大内視鏡画像をAIで解析し、検査中にリアルタイムで腫瘍や浸潤がんを高精度に判別することで医師の診断を補助する内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-Plus(エンドブレインプラス)」を2021年2月5日から国内で発売開始しました。

応用先例3:眼底画像

眼科での検査では主に、眼底検査・前眼部検査・OCT 検査の3種類の画像検査があります。ディープラーニングを応用したダブルチェックを実現できれば、見落とし率の低下が期待できます。

「日本眼科学会」で自治医科大学の高橋秀徳 准教授がAIを活用して眼の検査画像から病気の疑いの有無や視力を推定したりする研究について発表しました。網膜に異常がないかをみる眼底検査で撮られた写真をAIに学習させて、病気の疑いがあるかどうか調べるシステムを開発しました。

対象となる病気は、視神経が劣化することで視野がだんだん狭くなって失明するおそれがある「緑内障」や眼のレンズの役割をする水晶体が濁って見えにくくなる「白内障」、糖尿病が原因で網膜が傷つき、失明に至ることもある「糖尿病網膜症」などが対象だそうです。

AIが示した結果と医師の診断と一致する確率は80%を超え、医師の診断にかかる時間が3分の1ほどに短縮され、病気の見落としも少なくなったということです。

以上のように画像解析ではかなり成果が出てきていると言えるでしょう。

AI活用でなく、ITやICTを活用した事例としては電子カルテシステムやオンライン診療があります。電子カルテは比較的大きな病院では普及していますが、クリニックレベルでは未だ紙カルテを使用しているところも多いです。費用面の問題からでしょう。

オンライン診療は米国で先に進み、コロナ禍により日本でもサービスが本格化するかと期待されましたが、様々な課題がありオンライン診療に対する信頼度や利便性から結局あまり普及はしていません。

オンライン会議と診療では入手すべき情報に違いがあり、まだ課題が残っていると思われます。しかし課題はいつか必ず技術により克服されるものです。

今後のメドテックの進展を楽しみにしつつ、新しく誕生するサービスやスタートアップに医療分野の課題解決(地域医療情報連携、地域包括ケアシステム構築等)を期待します。

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