【仕事力】赤字という言葉の曖昧さ

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「赤字という言葉の曖昧さ」についてお話します。

コンサルをやっていますと経営者より「赤字」という言葉をよく耳にします。この赤字については曖昧なところが多いため、実際のところを確認する必要があります。

「売れば売るほど赤字が膨らむ」という言葉をときどき聞きます。

皆さん、どう思われますか?

集客目的の特定のキャンペーン商品に限っては有りうる話ですが、「赤字が膨らむ」ということはありません。

「売れば売るほど赤字が膨らむ」というのは「限界利益(販売価格―変動費)」がマイナスであるという意味です。実際にこのような販売価格で売ることはあり得ません。経営が立ち行かないことは明らかだからで経営者がそのような意思決定をすることはありません。またこのようなことをしていたら、開業してから1か月も持たずに倒産するでしょう。

すなわち、「売れば売るほど赤字が膨らむ」ということは現実的な経営ではほとんどあり得ないのです。もしあるとしたら、①販売価格を長期固定価格に設定した契約をしてしまい、その後、原材料費が高騰して限界利益がマイナスとなり、結果、この契約期間内は売れば売るほど赤字となってしまうというもの、②飛行機の乗客数が想定を外し少なすぎて燃料費も出ない状態、など不測の事態が生じたときくらいでしょう。

「売れば売るほど赤字が膨らむ」という言葉を聞いたら、「何か不測の事態が発生した」と考えどのようなことが起きたのかをヒアリングすることになります。そしてそれに対する手立てをコンサルは一緒に考えていくことになります。

「店を開けているだけで赤字が膨らむ」という言葉もときどき聞きます。

これは「利益(売上―変動費―固定費)」がマイナスという意味です。商品が売れなければ変動費は増加しませんので、固定費が圧迫しているということです。具体的には、商品が売れず売上がゼロあるいは小さいため、固定費を回収できず赤字となっている状態です。換言しますと、損益分岐点売上高を下回っているということです。(【新規事業】損益分岐点分析 | IB Designers (ib-designers.com)

コロナ禍ではこのような店舗が急増しました。お客さんが来ないため売上は小さいにも関わらず、家賃や税金はかかります。また開店すれば人件費もかかります。手立ては売上を増やす以外に方法はありません。具体的にはデリバリーやテイクアウトを始めた店舗が多かったと思います。

「赤字」という言葉からそれが起きている「構造」を整理していくことでそれを正しく捉えることができ、適切な手立てを打つことが出来るようになるのです。

コンサルはツールのテクニシャンではなく、構造を意識した会話をすることが基本的なスキルとして求められるのです。

おまけ:黒字倒産という言葉をメディア上でよく見ます。理屈上はあり得ますが(【仕事力】運転資金の管理 | IB Designers (ib-designers.com))、実際にこのようなことは稀です。これが起きてしまった場合、その原因は経営者と融資先との関係が悪いなど金銭以外のところに問題があることが考えられます。

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