【新規事業】ユニコーン Canvaの成功知見

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「ユニコーン Canvaの成功知見」についてお話します。

21 Questions from Aussie Startups: Highs, lows & lessons learned during Canva’s journey so far [Part 1] | by Melanie Perkins | Canva | Medium

新規事業開発、あるいはスタートアップ起業において大変参考になりますので最後まで読んで頂くことを希望いたします。

Canvaは2013年にオーストラリアで誕生し、2017年に日本語版がリリースされたグラフィックデザインプラットフォームです。

ソーシャルメディアのグラフィック、プレゼンテーション、ポスター、ドキュメント、その他のビジュアルコンテンツを作成するために使用されます。アプリには、ユーザーが使用するテンプレートが含まれ、このプラットフォームは個人では無料で使用でき、追加機能としてCanva ProやCanva for Enterpriseなどの有料サブスクリプションが提供されています。

いつでもどこでもデザインを作成できるサービス「Canva」はデザインの民主化を目指しており、世界190カ国、月間アクティブユーザー数6000万人以上、Fortune 500のうち80%以上の企業がCanvaを使用しており、ユニコーン企業となっています。

Canvaについて

創業は、メラニー(共同創業者兼CEO)が2008年にパースの大学で非常勤として従来のデザインソフトの使い方を学生に教えていたとき、煩雑で使い勝手が悪く骨が折れ、このことがきっかけになり「デザインソフトをシンプルに、オンラインで、コラボレーションで作りたいと考えた」ことだそうです。

従来において、デザインを行うには、まずソフトウェアを購入し、PCにインストールし、ソフトウェアの使い方を学習します。次に写真素材やフォントを購入し、テキストなど必要な情報を入手し、ようやくデザインに着手できます。このようにデザインを始めるまでに多くの面倒なことをやらなければなりません。こうしたプロセスをシンプル、かつオンライン上に一つにまとめたのが、Canvaです。

このCanvaオンラインデザインプラットフォームが全世界で受け入れられ大きな事業となりました。

メラニー氏は「ユニコーン企業として一定の成功を収めるまでの道のりは、決して容易なものではなかった」と述べています。

起業家として当初のビジョンは一貫していましたが、製品改良の反復とピボットをしているうちに、そのビジョンの具体的な表現方法は大きく変化していったそうです。所謂、プロダクト・マーケット・フィットのプロセスを経ることでビジョンを実現する具体的な方法が変化していったということです。

新規事業で避けては通れませんが、大切なプロセスです。最初は主観的な仮説から始まり、アジャイルによるユーザーテストを繰り返すことでユーザーに受け入れられ、満足される製品へ改良し続け、ある閾値を超える(PMF)ことです。

これは新規事業開発の苦労でもあり、楽しい期間でもあります。自身の発想・提案をマーケットへ提案しテストし、具体的なコミュニケーションをとり、新しい発見をマーケットから教えてもらう。そしてまた改良していく。新しい発見への喜びとクリエイティブな時間です。

メラニー氏は、ビジョンを作り上げる「時間投資」が起業家にとって最も大切な仕事であるとも言っています。上記のようにビジョン(向かっていく方向)に対して迷いなく確信を持ち、意思がしっかりしていれば、PMFで相当な苦労をしても耐えられるのです。

メラニー氏は、出資による資金調達の重要性も語っています。オーストラリアだけでなく米国へも行き、多くの投資家へ数百のピッチをこなしました。

投資家から受けた助言について、ピッチ資料に追加していったそうです。そしてピッチするたびに投資家からの助言を反映させていくと、あるとき、投資家からの質問や助言が減り、自分たちのやっていることを面白いと言い始めた。そのとき、投資家に対し、出資するか否かをこちらから聞いた。すると出資すると回答が来たそうです。

投資家を壁打ち相手として事業計画をブラッシュアップしていったそうです。資金調達とは投資家とのコミュニケーションの繰り返しです。

一方で次のようにも語っています。

「重要なのは、人々が満足するほどの価値を提供する製品をどのように作り出すのかという基本を学ぶこと」。「テストにおいてユーザーから多くのフォードバックを得ることが大切。ユーザーの感情的なジャーニーに特に注意を払いながら、Canva体験ツアーを完成させるのに多くの時間を費やした」そうです。

それが完成してからローンチしたそうです。

メラニー氏は、成長への学びとして以下に10挙げています。

①リアルな問題を解決すること

多くの人が気にしているリアルな問題を解決する製品を提供すること。

②多くの価値を提供できる無料サービスを提供すること

これは製品を早く一気に普及させることに役立つ。

③ニッチ市場で開始し、その後、幅広く展開すること

ニッチから始めて、それから普及モデルで広く展開させる。ニッチ市場で最初に顧客の問題を深く理解してからその後、広く展開するということ。

④成長に注力するが短期最適ではなく長期最適を意識すること

例えば、当社製品の国際化や、iPad、iPhone、Androidなどの新しいプラットフォームでのCanvaの販売戦略など広く長期的な展望をもった成長戦略を考えること。

⑤ゴールに向かって組織編制すること

まず「挑戦的な目標」を掲げてから、それを実現する組織を考えるということ。

※組織は戦略に従う:チャンドラー提唱

⑥素晴らしい体験を約束すること

ユーザーに対して素晴らしい体験を約束すること。当社製品をテストし、ユーザーの反応を観察し、細部にわたって丁寧に作り込んでいくことに多くの時間を費やすこと。

⑦SEO

ユーザーが当社製品を探しているなら、すぐに見つけられなければそのユーザーに申し訳ない。だからストレスなく見つけられるようにすること。

SEOは供給側の営業・集客の視点で捉えられていますが、ユーザーの利便性という視点で捉えているところは反対側の見落としがちな側面です。

⑧あらゆるデータを愛すること

ABテスト、ユーザーサーベイ、Googleサーベイなどテストから得られるデータをしっかり分析し施策へ活用すること。

⑨本当の価値を提供すること

製品およびマーケティングの両方において、本当の価値について軽視してはならない。根幹となるとても重要な価値であるということ。

⑩ユーザーが購入できる価格にすること

これはすべてに当てはまることではないですが、多くの場合、より安く、より早く、より効率的なものが求められています。これは社会に平等をもたらし、ビジネスにとっても良いことです。

この他に、

「資金調達はCanvaを立ち上げるには不可欠であったが、ユーザーコミュニティから聞いた物語が成功の最大要因であり、なぜCanvaのビジョンを追求したのかを明確する上で重要であった」とメラニー氏は語っています。

「私たちが現在持っている膨大なユーザーをすべて理解することは困難であるが、コミュニティからのフィードバックについて、我々のチームは貪欲である。あるデザインが彼女の出生した母親を見つける手助けをしたり、別のデザインが誰かの仕事に就く手助けをしたりするなど、デザインが様々な物語をつくるきっかけとなっていることに驚いている」

「当初我々が想像もしていなかったことが起きており、当社の製品が世界中に広がり、人々のそれぞれの目標を達成するのに役立っていることを知ることは、信じられないほどの報酬である」

新規事業が成功した際、当初想像もしていなかった効果があること、想定していなかった使い方があることなどをユーザーやマーケットから教えてもらえることも新規事業の醍醐味です。

またメラニー氏は「信じられないくらい才能があり、やる気のあるチームと毎日仕事できることは、絶対的な特権」とも言っています。

誰も歩いたことがない全く新しい道(未来)を切り開いていくには、このようなチームが必要であることも全く疑う余地はないでしょう。

※NHKのプロジェクトXでも紹介されたデジタルカメラの開発チームもそうでした。

更にメラニー氏は「起業家が健全な精神的状態を保ち、個人的に幸せな生活をおくるためには、同じ不安や情熱を分かち合える、あるいは助け合える、メンター的役割も担える創業コミュニティが重要」とも語っています。

メラニー氏は「私たちの会社が向かっている方向に自信を持っている。本当に素晴らしいチームがあり、当社製品を愛するユーザーコミュニティがあり、財務状態も健全で順調に成長している」。

「私が世の中で解決したいと思っていることは、他人の責任ではなく、私たち全員の責任であるという意識を強く持つようになった」。

以下はメラニー氏が自身へ送ったメモです。

・あなたは、直面している課題によって形成されている

・あなたの夢は、あなたの持っていないものから生まれる

・あなたの冒険心は、あなたを怖がらせる事柄から生まれる

・あなたの人格的強さは、失敗するたびに強くなる

・あなたの英知は、間違いから生まれる

・あなたの未来は、あなたの過去によって築かれる

・あなたの正義感は、不当なことによって強化される

・虹は、雨によって作られる

だから、直面する課題、持っていないこと、恐れていること、失敗すること、間違えること、を大切にする必要がある。このギャップに我々はインスパイヤ―されるのです。

より詳細を知りたい方は下記の原文をお読み下さい。

21 Questions from Aussie Startups: Highs, lows & lessons learned during Canva’s journey so far [Part 1] | by Melanie Perkins | Canva | Medium

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