【新規事業】エコシステム

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「エコシステム」についてお話します。

10年程前からでしょうか。日本のビジネスでエコシステムという言葉をよく耳にするようになりました。

エコシステムは生態系でよく聞く言葉でした。まずその経緯についてお話します。

エコシステム(生態系)は1930 年代イギリスの植物学者アーサー・タンスレーによって空気、水、土などの環境と互いに影響し合う生物の共同体を表す言葉として提唱されました。生物たちはそれぞれが繁栄するために利用可能な資源をめぐって競争したり、協力したり、共同で適応したりしている事実をそのように表現しました。

ビジネス戦略家のジェームズ・ムーアは、1993 年にハーバード・ビジネス・レビュー誌に発表した論文「Predators and Prey: A New Ecology of Competition」において、この生物学の概念を取り入れ、相互接続が進む商業界で活動する企業を、生き残るために適応し進化する生物のコミュニティと例えたのです。ムーアは、企業をある産業における一企業としてではなく、複数の産業にまたがる参加者からなるビジネス生態系のメンバーとして見ることを提案しました。

共通するポイントは、「自然の生態系と同様にビジネス生態系に関わる企業も適応と時には絶滅を繰り返しながら生存競争をしている」ということです。

具体的にビジネス・エコシステムとは、競争と協力の両方を通じて特定の製品やサービスの提供に関与する供給業者、販売業者、顧客、競合他社、政府機関などを含む組織のネットワークです。

(出典:Business Ecosystem Definition (investopedia.com) 参照2022.6.19)

ビジネスエコシステムとして有名なものを幾つか見てみます。

・Appleにおけるエコシステム

アップルのエコシステムは有名です。様々なエコシステムの実例が見られます。

iPhoneの製造においてカメラ、通信、販売など様々な企業が連携しています。一つの製品に対して多くの企業のデバイスが連動し機能を発現しているのでエコシステムと言えるでしょう。

※これはどの電気機器、自動車等にも昔から見られるものです。

アップルの特徴は「ハードは自社で製造」し、様々なアプリは他社に任せる(App Store:プラットフォーム化)という「オープン&クローズ戦略」を採用している点です。スマホから提供される様々な価値(お天気アプリ、語学アプリ、ゲーム、健康アプリ等)はオープンとしてその価値を提供する様々な企業等とエコシステムを形成しています。

Apple自身は「ハード(高処理能力)+プラットフォーム」のポジションを取り、価値提供は外部に任せるというものです。価値提供を出来る限り大きくするためにプラットフォームという仕組みを採用しています。

Appleが構築したエコシステムは、iPhoneなどの部品を提供する事業者、App Storeを通じてさまざまなアプリを販売する開発者、音楽などのコンテンツを制作するクリエイターなど、さまざまな企業と人々に恩恵をもたらし、共存共栄を実現したエコシステムとなっています。

一方、このエコシステムがユーザーの満足度を高めることにつながり、iPhone販売も順調です。Appleは主にiPhone(ハード)販売で儲けているのです(マネタイズ)。

このようにエコシステムという共創システムの中で「自社は寄生虫ではなく、自社が中心となった戦略を描く」ことが重要です。何となく取り残されたくないからエコシステムへ参加しておく、という姿勢では成功しませんし、エコシステムの中で期待される役割を発揮することは出来ません。

・クラウドにおけるエコシステム

クライドも10年程前から導入が拡大しました。オンプレミスのコスト面、メンテナンス面等の課題を克服したビジネスモデルです。クラウドのお陰で大企業にしかなかったシステムを中小企業でも低価格で導入することができるようになりました。セキュリティが強化されたことも一因となっています。

またシステムの初期投資も大幅に抑えられ、様々なインターネットとデータストレージを活用した新しいビジネスが生まれるようになりました(例:プラットフォームビジネス等)。

AWS(Amazon Web Services)やGCP (Google Cloud Platform)などの大手クラウドサービス事業者はプラットフォーマーとしてのポジションをとり、この自社のクラウドサービスに特化したSaaSなどを提供する事業者などとパートナーエコシステムを築いています。

パートナーエコシステムにより自社単独ではカバーしきれないユーザーに対し、パートナー企業を通じて導入支援やコンサルティングを提供できるほか、自社サービスを他社サービスと連携させることで新たな価値創造することや他社ユーザーを獲得できるメリットがあります。

ビジネスエコシステムの普及拡大はこのようにインターネット、IT、ビッグデータ、スマホというデジタル領域で顕著です。その理由はこれらがすべてインターネットを介して接続することが可能であるからです。人力に寄らず、システムとして自動連携しコストをあまりかけずにエコシステムを構築することが出来るからです。

このようなシステム連携、データ連携を実現するためにはAPI(Application Programming Interface、アプリケーション・プログラミング・インターフェース)と呼ばれる仕組みが不可欠です。

APIとは異なるソフトウェアやプログラム、Webサービスの間をつなぐインターフェースを指します。エコシステムにおいてはプラットフォームを提供する企業などがAPIを公開することにより、様々な企業が自社単独では入手できなかったデータや機能に簡単にアクセスし、迅速にサービスを開発、イノベーションを促進することができます。

地域包括ケアシステムというコンセプトがありますが、医療ビックデータ、介護ビックデータ、病院、クリニック、歯科医院、薬局、福祉施設、コンビニ、行政等の地域連携支援もエコシステムの構築により実現できるのです。

エコシステムは企業中心のパートナーシステムに限らず、地域社会活性化、社会課題解決の方法論としても期待されているのです。

最後に、ビジネスエコシステムで社会課題解決に取り組んでいる事例としてBIPROGY(旧日本ユニシス)を紹介します。同社の想いが伝わるようにホームページから抜粋させて頂きました。

ビジネスエコシステム | 企業情報 | BIPROGY株式会社

(以下抜粋)

テクノロジーがビジネスモデルを変え、業界の垣根が崩壊しつつあります。自動運転車、ドローン配送など、これまで想定していなかった新たなサービスが法規制さえ変える時代です。そんな時代には、先見性と洞察力で社会課題に着目し、新たなビジネス機会を予見することが求められます。

そして社会課題を解決するビジネス創造のためには、業界を越えた連携が不可欠です。複数の企業や団体がパートナーシップを組み、それぞれの技術や強みを生かしながら、業種・業界の垣根を越えて共存共栄する仕組み、すなわち「ビジネスエコシステム」を構築するのです。

BIPROGYは、ビジネスエコシステムの中核となって、革新的なサービスをつくっています。

(抜粋ここまで)

アップル同様、ビジネスエコシステムの中核というポジションをとることを意識されています。

同社が実現したビジネスエコシステムが紹介されています。

(以下抜粋)

電気自動車(EV)の充電インフラシステムサービス「smart oasis®」(スマートオアシス)です。環境問題に対処する上で、EVの重要性はますます高まっており、充電インフラの整備は欠かせません。多くのメーカーが充電器設備の開発や充電スタンドの設置に取り組んでいますが、私たちはそれらをネットワーク化することの価値に着目しました。充電スタンドがネットワークでつながれば、ドライバーは設置場所などを簡単に知ることができますし、空き具合を確認して予約もできます。何よりも充電スタンドを無人で運営することが可能になります。そこで、当社が開発した通信モジュールのAPIを、充電器メーカーなどに無償公開しました。その当時、ネットワーク化のニーズはなかったのですが、いち早くAPIを公開したことで、多くのメーカーが賛同してくれました。こうして生まれた充電インフラを支えるプラットフォームは、低炭素社会を実現するビジネスエコシステムのプラットフォームにとどまらず、カーシェアリングや自動車保険、旅行にも活用されています。業界を越えてビジネスエコシステムは拡大し、社会全体をつなげるスマートタウン構想へと発展していきます。

(抜粋ここまで)

以上エコシステム(ビジネスエコシステム)について紹介しました。

地球規模、地域規模での課題が山積している時代。個別の企業によるソリューションだけでは到底解決できないものばかりです。

このような大きな課題を解決する方法論としてエコシステムは有望であり、それを実現するデザインとリアリティがビジネスチャンスとなります。

概念は簡単のように聞こえますが、実際に実現しようとすると様々な利害関係者と交渉、協力を取り付け、必要となる新たな技術開発も実施せねばならなくなり骨の折れるものです。しかしそれだけ大きな課題を解決しようとしていることですから「大いにワクワクする」はずです。

皆様、社会課題解決にチャレンジしてみては如何でしょうか。

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