【新規事業】新規事業で法務を味方にする

アイビーデザイナーズ代表 細野英之 です。

本日は、「新規事業で法務を味方にする」についてお話します。

事業を実施する場合、様々な法令を遵守する必要があります。これは新規事業についても同様ですし、テストマーケティングの際も個人情報保護法など遵守すべき法令があります。

新規事業開発のメンバーで広く法令に詳しい方は稀だと思いますので、どうしてもその領域のサポーターが必要となります。具体的には会社の法務部門あるいは顧問弁護士となります。

彼らに新規事業推進のサポーターになってもらう必要があるのです。

法務部門の役割は成熟企業、老舗企業では「ブランドを毀損しないように」リスクマネジメント(守り)が中心となっていることが多いです。

一方、ベンチャー企業やスタートアップ企業の法務は創業社長と一緒に生まれたばかりの事業を成長させるために伴走する所謂、攻めの法務が中心となっています。

このように考えますと、成熟企業や老舗企業において新規事業を開発し、事業を成長・成功させたい場合、慣れ親しんでしまった守りの法務部門では支援が十分でないということが起こり得ます。具体的にはリスクを回避することがメインであった業務と並行して新規事業ではリスクを取っていく法務業務も行っていかなければならないのです。

同じ法務部門の人材がこの両方をバランスよくやることは中々難しいかもしれません。

成熟企業においては今まで長年かけて築き上げてきた社会や顧客に対する信頼ブランドを毀損するようなことは絶対に避けなければなりません。すなわち、成熟企業内で新規事業を開発していく場合、ブランドを毀損するような事件が起こらないようにすることが前提条件となります。この前提において攻めをしていくことになります。

このような難しい舵取りは法務部門のスペシャリストのサポートがなければ実行できません。

法務部門の仕事の基本は会社が行っていること、行おうとしていることが「法的に正しいこと」となっていることをチェックすることです。例えば、取引先企業との契約書、あるいは新規事業においてスタートアップ企業等と協業を検討するための契約書(秘密保持契約書や共同開発契約書等)の内容が独占禁止法違反(優越的な地位の乱用等)となる可能性はないか。プレスリリースをする際、その情報の開示内容は秘密保持違反となっていないか等。

また監督官庁の許認可が必要な事業や工事の場合、その申請と許認可は取れているか。工場などで騒音規制や排水規制を遵守できているか等。法務部門の仕事は多岐に渡ります。これを新規事業開発メンバーがこなすことは困難です。

一方、新規事業開発においては法務部門の意識改革も必要となります。今までの守り中心の思考を攻めに翻訳し、法務の「同じ仕事でも守りの側面と攻めの側面」があることを認識するのです。

例えば、営業部門で顧客情報を扱う場合、個人情報保護法を遵守する必要があります。個人情報の漏洩や不正利用は企業ブランドを毀損し、顧客や社会からの信頼を失うことにつながります。よって、個人情報の管理と説明書(セキュリティ・ポリシー)はしっかりしておく必要があります。このストーリーは守りの側面です。

一方、攻めの側面としては「当社が個人情報の管理を徹底していることを顧客へ説明周知することで顧客から信頼を得て、安心して当社と取引して頂ける」というストーリーもあります。こちらの攻めのストーリーにおいては売上を増やしていくことに貢献することになります。逆に個人情報管理の説明が簡素なものだと顧客は不信感を抱き、商品の良し悪しの前に取引する企業として信用されず売上につながらないということになります。法務の仕事も売上貢献するのです。

新規事業を実施する際、リーガルリスクの有無を必ずチェックする必要がありますが、事業が斬新過ぎて法整備されていないこともしばしばあります。

例えば、ドローンを活用した配送事業の場合、法整備がなされていない部分があり、当該新規事業者は事業の社会的価値を訴求し、自治体等と一緒に前向きな法整備をすることができます。このとき新規事業者側にも法律のスペシャリストが必要です。

あるいは法整備が未成熟な発展途上国へ事業進出する場合、当該国の関係省庁へ法整備の支援をし、当社が当該国での事業開始の初企業となることもできます。

新規事業開発においては企画段階で一度、法務にリーガルチェックを受けておくと良いです。テストマーケをし、製造段階でリーガルチェックを受けて問題が生じた場合、大きな変更を余儀なくされ大幅に後戻りしてしまうリスクがあるからです。

特に新規事業の場合、法律で白黒を明確にすることは難しいケースが多いです。従って守りの法務であればリーガルリスクがある場合、止める、という判断をしてしまいますが、攻めの法務の場合はリーガルリスクを特定し、その影響度合いを分析し、更にそのリスクをコントロールする方法を考えます。このようにすぐ諦めるのではなく、取れるリスクはとって事業を推進するという姿勢が新規事業をサポートする法務部門には求められるのです。

また法務部門は法律的にOBゾーン(明らかに法令違反)へ行かないように道案内する役割も必要です。換言すると法的なフェアウェイを案内することです。

新規事業開発側から法務部門に期待することは、「法務のスペシャリストであること(正確な法知識、適切な解釈、正しいことをやるという姿勢)」、「事業に興味をもって理解してくれること」、「ビジネスパートナーとして事業成功を目指してスピード感をもって支援してくれること」、「事業側の悩み(どうしたらよいかわからない等)を聞き、法的(ルールに沿って)に解決できる方法を考えてくれること」、「紛争等困ったときにいつも助けてくれること」などです。

新規事業開発においてオープンイノベーションを活用するケースが増えています。このとき法務部門は契約書作成において従来のリスク回避を主とした「ガチガチの守りの契約書」を作るのではなく、「攻めと守り」、「協業先との共栄」などのバランスを考え、成長や関係構築のための余白をつくることも大切です。

また法務部門には法改正の情報が集まっています。法律が変わる場合、その法律に遵守した事業に修正したり、逆にビジネスチャンスが生まれたりもします。そのような観点で事業部門へ情報発信することも法務部門の重要な役割となります。

以上「新規事業と法務部門」との関係をお話しました。

当社はこの領域の知見も得意としていますので、何かございましたらご相談下さい。

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